こんにちは! レストランでのマナーは守っている(つもりの自称)、出来る大人ソムリエ、渋谷です!
いきなりですが、今回はタイトル通りBYOに関するマナーに加え、ソムリエらしからぬテクニックも、これら2本のワインと共にご紹介したいと思います。
まずは手始めに、BYO (またはBYOB)とはいったい何かというと、Bring Your Own (Bring Your Own Bottle)の略で、元はオーストラリアから始まった、好きなワインをお店に持ち込んでもよい、という制度になります。
今回はレストランへのワインの持ち込みに関することを書くわけですから、同業者から「売り上げにならないだろ!」なんて叩かれそうな、書いては消して書いては消して、何度も迷った禁断スレスレのネタでもあります。
ですので先に申し上げますと、決してBYOを助長しているわけではありません。
しかし外食を控え気味のこの時期に、少しでも飲食店に足を運ぶ機会が増えればいいなと思います。
それに意外なことに、お店側も助かることって多いんですが、裏事情なのでそれはまたいずれ…。
よく持ち込みOKのお店や、持ち込み可能な曜日などを設定しているお店を見ますが、それでもお店ごとにルールはありますので、必ず守るようにしましょうね。
好きなお酒を何でも勝手に持ち込まれてしまうと、お店にとって迷惑になる場合もありますし、何より商売にならなくなります。
これは実体験ですが、グラスワインを1杯だけ注文してグラスを確保、その後はカバンに忍ばせていたワインをこっそり飲む、なんて非常識な人もいました。
「注文してるんだからいいだろ!」なんて毎度文句を言われるので、当然出禁にしました。
白ワイン頼んでるのに、途中から赤ワイン飲んでたら当然バレますよねw
Sidewaysという映画にも似たようなシーンがありましたが、知っている方はいますか?
まぁこれはさすがに稀なケースでしょうが、こうならない為にも、ちゃんとルールを守り、マナーさえ身につけて頂ければ、皆さんもお店もお互いハッピーになれますよ~、という事をお伝えしたいと思います。
持ち込むワインにもセンスが問われ、色々と気配りも大切になってくる、実は人間性が問われるのもBYOでもあります…なんて大袈裟な…
持ち込むのに正解のワインなんてものはありませんが、お店に敬意を払いながらもスマートに、そしてワインのパフォーマンスを上げる飲み方をご紹介いたします。
一緒にできる大人を目指しましょう!
渋谷 大輔(しぶや だいすけ)
2020年 アジア – フランスワイン ベストソムリエコンクール 準優勝
SUN with MOON Japanese Dining & Cafe所属
<資格>
Certified Sommelier by Court of Master Sommelier
WSET Advanced Certified in Wine & Spirits
インターナショナルワインチャレンジ酒部門 准審査員
WSET Advanced Certified in Sake
<受賞歴>
2019年 シンガポール – フランスワイン ベストソムリエコンクール優勝/アジア大会シンガポール代表
2019年 シンガポール – アメリカワイン ベストソムリエコンクール優勝
~BYOのルールとマナー~
では早速、一部私の主観も入りますが、絶対にやってはいけないことから
-
無断で持ち込む
場合によってあはBYOをやっていない場合もありますし、いくら何でも失礼ですよね。
-
お店に置いてあるものと同じワインを持ち込む
お店で飲むと高いからといって同じものを持ち込むのは、大変失礼な行為にあたります。
偶然でもかぶらないように、事前にワインリストを確認しておきましょう。
ただし、昔に購入した記念のボトルなどであれば、もちろん大丈夫ですので、その場合はお店側に一言お伝えしておきましょう。
-
安価なワインを持ち込む
お店の格がありますので、余りにも安いワインを持ち込むと、事情を知らない周りのテーブルからは、お店のワインの品揃えが貧弱と思われてしまいます。
それに、もし抜栓料を支払うと逆にこれは損してしまいます…
-
周りのテーブルに勝手にふるまう
単純にお店にとって迷惑になります。
偶然仲良くなったテーブルがあっても、店員さんに一言断りましょう。
是非実践していただきたいこと
-
持ち込んだもの以外の飲み物も注文する
無料で持ち込んでいる分、ビールでもいいのでお店をサポートしてあげてください。
-
店員さんに、テイスティングとして差し上げる
もしくはボトルにワインを少し残して帰る
気持ちとして、店員さんへ少量差し上げて下さい。
ワインを勉強している店員さんも多く、とても喜ばれます。
逆に良いことが起こるかも?
でも仕事中に無理矢理飲ませる行為は止めましょう。
ちなみにボトルに残して帰ると捨てられる場合があるので、一言添えましょうね。
しかし、つい酔ったら忘れてしまうので、酔う前に実践を!
-
気軽なお店の場合、抜栓からサーブまで自分たちでする
持ち込んだワインが高級だったりしても、知識の乏しい店員さんだった場合、扱いが難しいです。
せっかくのワインが台無しになってしまう場合も…。
それと、忙しい店員さんの時間をなるべく割かないようにしましょう。
ですがファインダイニングの場合は、店員さんにお任せしたほうがスマートです。
事前に確認しておくこと
-
電話などで持ち込む旨を事前に伝えておきましょう
もしかするとBYOをやっていない場合がありますので、必ず確認しておきましょう。
-
ワイングラスの有無を確認し、なければ自分で持っていきましょう
グラスを用意しているお店はほとんどですが、念のため確認した方が良いです。
もし持ち込んだ場合、グラスは家で洗いましょう。
たまにすすんで洗ってくれる優しいお店があり、大変頭が下がります。
ただし、店内で割れてしまった場合は、全て自己責任です。
-
オープナーやアイスバケツなど、必要な道具を用意してもらえるか確認しておきましょう。
オープナーはあると思いますが、道具が揃っている事は期待しないほうがいいです。
以上、偶然にもBYO 10か条みたいになりましたが、要するに思いやりですね。
それではこれを基本に、もう少し突っ込んでいきましょう。
~ワイン選び~
では、どのようなワインを持ち込むといいのでしょう?
適切なボトルなんてあるのでしょうか?
高級ワイン、記念ボトル、シンガポールで手に入れにくいレアなボトル、などありますが、基本的にはどれでもOKです。
フレンチだからフランスワインを持っていくのが良い悪い、という事もありません。
ただ10か条にあったように、お店に確認して同じボトルがリストにあれば、なるべく控えましょう。
同業者として恥ずかしながら、持ち込んだボトルを裏でアレコレ言っている悪質な店員さんもいることは事実ですが、しっかりとした理由があれば、自信を持って好きなワインをBYOしてください。
~テクニック~
続いていよいよ、ソムリエらしからぬ、ワインのポテンシャルを最大限に引き出すためのテクニック編です。
こちらのシャトー・ラグランジュを例に、説明していきます。
名前:Chateau Lagrange (シャトー・ラグランジュ)
タイプ:辛口
色:赤
ヴィンテージ:2016
原産地呼称: Saint Julien (サン・ジュリアン)
1855年にボルドー・メドック格付け第3級となりましたが、実は一昔前まで評判は落ちており、その後1983年にサントリーが購入し立て直して以来、とても評価の高いワインへと生まれ変わった、このシャトー・ラグランジュ。
2016年は史上最高の出来!と呼ばれるほど、とても力強くあり、同時に凝縮感のある仕上がりになっています。
なんと飲み頃は2025年~2060年とのこと!
とても良い年でパワフル、しかもまだ若いのに澱の量が凄く、知らずに開けると痛い目をみるかもしれません。
ではこのワインを持ち込んだとして、何が想像できるでしょう?
開けたてはガッチガチでタンニンも荒々しく、正直美味しいと感じられないかもしれません。
それにお店へ持っていく最中に、澱が舞ってしまうため、口の中にジャリジャリが混入してしまいます。
身体に害はありませんが、決して気持ちのいいものではありません。
本来のポテンシャルはとても大きいですが、さすがに飲み頃まで何十年も待てませんよね。
そういう時は、ワインを空気に触れさせることで、半ば強制的に熟成を促します。
空気に触れることでワインの印象が大きく広がり、隠れている様々な香りが前面に出てくるようになります。
お家でなら簡単に事前準備が出来るので、誰にでも引き出すことができますよ。
これがいわゆる、ソムリエらしからぬテクニックなわけです。
その名もダブルデキャンタージュと言い、それ自体はちゃんとした方法として認知されています。
ダブルというだけあって、ワインをボトルとカラフェ間を2度移動させ、ワインの澱を取り除きつつ空気に触れさせることで、一気にワインを開花させてしまう、立派な方法です。
ん?ちゃんとした方法なのに、ソムリエらしからぬ…?
はい、というわけで、お店ではできないような、ズルして楽な方法をお教えしますw
必要なモノ
- カラフェ(お家なら計量カップでも代用できますが、香りが移らないように注意)
- スーパーによく売っている、茶葉を入れる袋 (以下お茶袋)
- 漏斗 / じょうご、もしくは耐水性のフィルムなど
↑
お茶袋と、ワイン専用のフィルム
方法
- まずワインを開けましょう。
劣化がないか味見しておきましょうね。
- お茶袋でワインを濾しながら、カラフェに移します。
これで澱を取り除きながら、空気に触れさせていきます。
- 空いた瓶を水でシャカシャカゆすぎます。
瓶の中に残っていたり、こびりついている澱を取り除きます。
洗剤はNG!!
- 瓶にワインを少し戻し、シャカシャカ振ってボトル内の水滴を取ります。
その薄いワインは飲んでもいいし、捨てても構いません。
- 漏斗やフィルムを使い、ワインをそっと瓶に戻します。
- ワインに栓をします。
これで完成です!
では同じ作業を、こちらのワインにもやってみましょう。
名前:Pintia (ピンティア)
タイプ:辛口
色:赤
ヴィンテージ:2016
原産地呼称: Toro (トロ)
Unico (ウニコ)という高級ワインを造る、スペインのVega Sicilia(ベガ・シシリア)グループが手掛ける、これまた飲みごたえのあるワインです。
こちらは先ほどのシャトー・ラグランジュよりは明るい印象で、より多くの黒系果実の香りが見つかります。
こちらの飲み頃は今から2026年までらしいですが、シャトー・ラグランジュよりも樽の使い方が特徴的で、やはり開けたてだと飲みにくいので空気に触れさせて、飲み口を柔らかくしてあげたいですね。
こうしてワインが2本揃いました。
いかがでしょう?
簡単ですね!
途中状態を見るために試飲しながら作業するので、少~しだけ量が減りますw
このワインは持っていった先でいつでも飲める状態ですが、注意すべきことがあります。
それは酸化が進みやすい、ということ。
一度抜栓しているので、しかも液量が減って空気が混入しているため、時間と共に酸化が進みます。
飲み頃に合わせ、早めに消化しましょう。
全てのワインにこの作業が当てはまるかと言えば、決してそうとは言い切れないのがワインの難しいところ。
今回ご紹介したワイン達は、ダブルデキャンタージュで美味しくなることを私が保証いたします。(2021年時点)
ですが弱々しいワインの場合、ピークを過ぎて残念な結果となってしまうので、気を付けて下さいね。
絶対ではないですが、今回ご紹介のワインのような、タンニンが強いもの(=タンニンがまろやかに)、樽が強いもの(=優しい口当たりに)、フルボディのもの(=全体的にまとまった感じに)だと力を発揮できます。
何事も経験が必要ですので、まずは家飲みで試してみてはいかがでしょうか?
そして同じBYOでも、お店のワインを1本購入ごとに1本持ち込み無料、というお店も多くあるので、そういった情報も仕入れておくと役に立つと思います。
ルールやマナーを守り、料理に合わせて飲み頃ワインをスマートに。
周りから一目置かれること間違いなし!
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Blk 34 Upper Cross St, #04-150, Singapore 050034
お問い合わせ&お申し込みは
メール teppei@byst.sg
WhatsApp +65-8138-4613
SUN with MOON Japanese Dining & Cafe
Address: 501 Orchard Rd, #03 – 15, Singapore 238880
Tel: 6733 6636
https://www.sunwithmoon.com.sg/
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