ビール好きの皆様こんにちは!
クラフトビールをテーマにコラムを書かせていただいております、SG TAPSマネージャーの広瀬です。
前回に引き続き1軒で30種類のクラフトビールが飲めるお店を紹介しながら、色々なタイプのビールを細かく解説していきたいと思います。
<広瀬礼仁>
シンガポールのクラフトビール専門店「SG TAPS」店長兼ウエイター。
当地シンガポールにて、クラフトビール業界に5年程関わったのち、2018年4月に独立。ビールを始め、日本酒、ワイン、ウイスキーなど、アルコール文化に対する愛は誰よりも広く深いと自負している。
㉑. Crazy Mountain (US) Hoesshoes & Hand Gren / ESB
コロラド州デンバーのブリュワリーで、動物や木や森をモチーフにした、アメリカの野生をイメージしたビール作りをしています。ESBとはエクストラ・スペシャル・ビターの略で、読んで字のごとくより苦みを与えることに注力したビールです。イギリスの歴史あるブリュワリーFuller’sのものが有名で、大きくESBとラベリングされたボトルは、古くからあるパブなどではよく見かけます。どちらかといえば古き良きエールビールの趣があり、現在ではほとんど見かけないカテゴリーですが、このブリュワリーはそういったアメリカのビール黎明期をイメージに織り込んでいるのかも知れませんね。
㉒. Pirate Life (Australia) Big Red / Imperial Red Ale
赤みを帯びた褐色や赤銅色のビールも多くあり、レッドエールと呼ばれるものもその一つです。麦のローストを強くしているため、麦そのものの甘みやカラメルのような味わいがあるのが特徴です。アンバーエールやアイリッシュエールなどもこのカテゴリーに入り、赤い色のエールを総称してレッドエールと呼ぶためこれといった定義づけがなく、その味も地域も広範囲に渡ります。
㉓. Cloudwater (UK) Yandaro Imperial Brown / Brown Ale
ブラウンエールはレッドエールより更に褐色が濃くなったエールで、麦のローストをより強くしているため、麦由来の甘みも一層強く、またカラメルだけでなくナッツやトースト、ビスケットなどのような、もう一段複雑な香りを伴うようになります。このビールは更に、Yandaroというコーヒー豆を使用し、コーヒーの風味も加えています。
㉔. Young Master – Siren Craft (HK & UK) High Tea In Hong Kong / Scotch Ale
香港のYoung MasterとイギリスのSirenのコラボレーションビールです。
近年はより特徴のあるビールや挑戦的なビールを求めて、ブリュワリー同士のコラボビールが盛んになっており、この様に遠く離れたブリュワリー同士でのコラボも珍しくなくなってきました。特にこのYoung Masterはとてもコラボレーションに積極的なブリュワリーで、他にも多くのブリュワリーとのコラボを成功させています。Young Masterはとてもハイクオリティーなブリュワリーで、今やアジアのクラフトビールを牽引する存在にまでなっており、シンガポールでもその存在感を存分に発揮しています。ウイスキーの本場であるスコットランドにはビールにおいても伝統の「スコティッシュエール」と「スコッチエール」があり、どちらも大麦のモルトの甘みや旨味を生かしたビールです。
スコッチエールはスコティッシュに比べ、アルコール度数も高く、モルトの風味をより強く押し出していて、カラメルやメープルシロップのような濃厚な味わいです。ウイスキーを使用しているわけではありませんが、ウイスキーに使用した木樽などで貯蔵したものもあり、どこかウイスキーを思わせるのは地域性でしょうか。まさにウイスキーのようにゆっくりと少しづつ楽しめるエールとなっています。ちなみにこちらは、13.8%と高アルコールでもあり、熟成ビールでもあるので、1パイントが$30と、とても高額になっています。
㉕. 8 Wired (New Zealand) Flat White (Nitro) / Coffee Milk Stout
実は多くの有名ブリュワリーを輩出しているニュージーランド。8 Wiredはその北部にあります。シンガポールでも多く見かけることができます。スタウトはとてもよく知られたイギリス発祥のエールスタイルの黒ビールで、非常にシルキーでクリーミーな泡だちで、苦みと共にモルトの甘みも十分に持っており、それしか飲まない好事家も多く存在するほどです。こちらはコーヒーミルクスタウトです。ビールにコーヒーとミルク?と意外に思われるかもしれませんが、スタウトはその味わいからコーヒーとの相性が良く、実は多くのコーヒースタウトが作られています。またミルクは牛乳をそのまま使用するわけではなく、二次的な発酵を促すために加える糖分にラクトース(乳糖)を使用し、敢えてビールに甘みを残すという製法です。こちらもイギリスでは割と古くから作られてきたビールで、このコーヒーミルクスタウトとは、その二つの特徴を合わせた贅沢なスタウト、という事でしょう。また、Nitroと書かれていますがこちらはナイトロ(ニトロ)の事で、なんだか燃料のようですが、飲料業界では一般的に窒素の事を指します。ナイトロを炭酸ガスに加えると、霧のようなふわっとした美しい泡立ちになり、これはギネススタウトやキルケニーなどが有名です。またスターバックスでも一部の店舗ではコーヒーのサーブの演出に使用されており、ビールさながらのタップからビロードのような泡のコーヒーが注がれるのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。味に関係するとは言い難いのですが、演出としてナイトロを加える手法はクラフトビール界でもよく使用されています。
㉖. Deschutes (US) Black Butte Porter
ポーターもイギリス発祥のエールタイプの黒ビールで、その歴史的にも味わい的にも非常にスタウトと似通っており、はっきりとした区分けがなく、スタウトとほぼ同義と考えられています。
有力な定義づけとしては、ポーターというカテゴリーの中の、アルコールが高いものを指してスタウトというとされていますが、これも諸説あり、一般の飲み手目線からすると、ポーターとスタウトはほとんど一緒のもの、という理解でいいようです。
㉗. Anderson Valley (US) Barney Flats / Oatmeal Stout
オートミールと聞くと反射的にあのぐちゃっとした食べ物を思い浮かべるかもしれませんが、オーツ麦自体は大麦、小麦に続き、比較的ビールにもよく使用される原料です。ビールを作るにあたっては、すべからく麦を粉砕し、煮沸してどろどろの状態にするので、その意味ではどのビールもオートミール状の物体を使用しているわけですね。オートミールスタウトはそのような状態を半分冗談で例えたものかもしれません。独特のクリーミーさと甘みを持つスタウトです。
㉘. Rocky Ridge (Australia) Undead Monk / Belgian Stout
ベルジャンスタウトは、世界的にはそれほどメジャーなカテゴリーではありませんが、本国ベルギーには数多く存在します。ベルギーのビール酵母を使用して作られるので、イギリスのスタウトに比べ、香気成分が強いのが特徴のようです。アンデッドモンク(ゾンビ僧侶)というビール名になぞらえて、アルコールをわざわざ6.66%という不吉な数値にするという、謎の手間をかけています。
㉙. Rogue (US) Santa’s Private Reserve / Belgian Dark Ale
ベルジャンダークエールと銘打たれた、クリスマスシーズン限定の高アルコールダークエールです。ベルギーのビールの中でもプレミアムに位置づけられるもので、スパイスを加えたり長期熟成されるものも多く、そこから得られる抜群のフレーバーや複雑味や厚みのある味わいは、ビールを超えた楽しみをもたらします。
㉚. Stone (US) Xocovenza / Imperial Stout
大量のチョコレートを始め、ナツメグ、シナモン、ペッパー、バニラなどを加えた、とても複雑な味のインペリアルスタウトです。スタウトは合わせられる副原料の幅が広いので、時にとてもユニークで挑戦的なものが作られます。
3回に渡って合計30種ご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
クラフトビールといっても世界中にあり、また歴史的背景なども加わって日々新しいものが作られています。ブリュワーリーの背景を知るとより一層楽しめるのもクラフトビールの魅力です。
気になるクラフトビールがありましたら、是非お試しください!
SG TAPS
島内唯一シンガポールのクラフトビールが10種類、生で飲めるシンガポールビール専門店。 ボトルビールでは更に、日本、香港、ベトナム、台湾、インドなどのクラフトビールを揃え、アジアのクラフトビール文化を底上げしていきたいと考えている。 ラクサピザ、奄美鶏飯風チキンライスなど、ローカル、和洋食を絶妙に組み合わせたユニークなフードも人気。
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