こんにちは! 実はウィンタースポーツが得意の雪国出身、でもシンガポールでは見せ場がないソムリエ、渋谷です!
大学時代には、アパートの一部屋を贅沢にもスキーのメンテナンス専用ルームにするなど、冬が大好きなアルペンスキーヤーでした。
大学が田舎のほうだったので、部屋が安かったんですよね。
そういえば1棟に6室ありながら、なぜか私の部屋だけ半額…。
あとから知ると怖い話ですが、結局未だに理由はわからず…。
とまぁそんな私ですが、シンガポールに来てから何と10年が経ちました。
しかしシンガポール歴 = 雪に触れていない期間とも言え、陸上でも水中でも運動が好きではない私としては、さすがに身体が鈍ってるなぁと痛感する毎日です。
でも誰かが言っていました。
この数年で地球全体が丸くなったと…。
このように見た目で判断できれば簡単なのに、パッと見ても丸くなったかわからないものがあります。
それは、このブログからは当然の答え、ワインです。
よく丸いワインとか、硬いワインなどと表現することがありますが、いったいどういう事なのでしょうか?
本日は「ワインが丸くなる」という現象について、お話したいと思います。
丸くなるということは、逆に言えば、元々は硬いワインだったとも言えます。
なぜ硬いとされるのか、その要素がいくつかあるわけなのですが、主にポリフェノールが挙げられます。
よくCMなどで、“ポリフェノール配合!”と謳っているのを聞きますが、そもそもポリフェノールって何でしょう?
渋谷 大輔(しぶや だいすけ)
2020年 アジア – フランスワイン ベストソムリエコンクール 準優勝
SUN with MOON Japanese Dining & Cafe所属
<資格>
Certified Sommelier by Court of Master Sommelier
WSET Advanced Certified in Wine & Spirits
インターナショナルワインチャレンジ酒部門 准審査員
WSET Advanced Certified in Sake
<受賞歴>
2019年 シンガポール – フランスワイン ベストソムリエコンクール優勝/アジア大会シンガポール代表
2019年 シンガポール – アメリカワイン ベストソムリエコンクール優勝
耳にするけど聞かれたら答えられないモノ代表とも言えるポリフェノール…。
実はポリフェノールとは、植物が作る抗酸化物質の総称になり、自然界には何と5,000種以上も存在しているそうです。
『抗酸化』、それにしてもいい響きですね!
抗酸化物質の種類によっては、お肌もキレイになったり、動脈硬化などの成人病予防にもなるとか。
さてさて、日頃飲んでいるコーヒーやお茶になどにも多く含まれているポリフェノールですが、ワインではどのようなものがあるのでしょう。
まずは色素の一つであるアントシアニン、これはあらゆる果物に含まれ、眼に良いとされていますね。
続いて渋味の素であるタンニン、これはワイン以外ではあまり聞かないかもしれません。
そしてワインに苦味を与えるカテキン、これは緑茶でもよく知られていますね。
などなどありますが、いずれも“適量”を摂取することにより、身体にプラスに作用いたします。
ポリフェノールを少し理解したところで、次はどのようなワインにポリフェノールが多いのか、紹介いたします。
色素やタンニンはポリフェノールということから想像できるように、色の濃い、かつ渋味の強いブドウに、より多く含まれます。
その最たる例として、Cabernet Sauvignon (カベルネ・ソーヴィニョン)が挙げられます。
つまり、カベルネ・ソーヴィニョンから造られるワインを飲めば、抗酸化作用がより強く働くという事ですね。
なるほど。
さて、ここまではポリフェノールについてのお話でした。
次からは肝心の、丸くなる現象についてお話致します。
一度は飲んだことがあるであろう、ボルドーワインを想像してみて下さい。
多くのボルドーワインはカベルネ・ソーヴィニョン主体で造られておりますが、このようにポリフェノール量が多くなると、渋味がキツくてワインはフルボディになりやすく、開けたてだと非常に飲みにくいワインだったりすることがよくあります。
つまり、この状態を硬いワイン、ガチガチのワインと表現したりします。
しかしこの天然のポリフェノール達は、ワインを酸化から守る役割もしており、品質を保つのに重要な勤めを果たしております。
ということは、逆に考えると、酸素に触れさせることにより、このガチガチがだんだんと取れてくるとも考えられます。
ではそうすると、どう変化していくのでしょう。
まず渋味が和らぎます。
これは重たいワインが苦手な方にはかなり有難いと思います。
そしてフレッシュな果実味が増したり、完熟、ジャムやタルトなどの加熱した果実に、さらにはドライフルーツへと変化していきます。
これは果実以外にも、ハーブの香りもフレッシュからドライに変化したりと、ワイン全体の時間の経過までもが感じ取れます。
さらにはトリュフやなめし革などといった、熟成香と呼ばれる香りが生成され、結果香りや味わいに複雑味が生まれてきます。
他にも変化は色々とありますが、これら3点がわかりやすいものではないでしょうか。
さて、ワインの硬さをとる方法として、空気に触れさせるという事は理解頂けたと思います。
ようやくここからが本題になりますが、ではどうやって行えばいいのでしょう?
1.普通に開けて飲む
それだけでグラスのワインが空気に触れ、ボトル内にフレッシュな空気が入り、ゆっくりとワインの硬さが取れてきます。
これを「ワインが開いてきた」と表現します。
そんなに硬くないワインであれば、レストランで1本オーダーした際にも、ゆっくり飲めば徐々に味わいが変化するので、これだけでも十分に楽しめます。
名前:Les Hauts de Lynch Moussas (レ・オー・ド・ランシュ・ムーサ)
タイプ:辛口
色:赤
ヴィンテージ:2016
原産地呼称: Haut Medoc (オー・メドック)
例えばこちら、Les Hauts de Lynch Moussas (レ・オー・ド・ランシュ・ムーサ)。
ボルドー格付け5級 Chateau Lynch Moussas (シャトー・ランシュ・ムーサ)が生産する、いわゆるセカンドラベルと呼ばれるものになります。
セカンドラベルとは、その生産者が造るワインの中で、最高ではないけどかなりポテンシャルがありますよ~というワインです。
ファーストラベルと比べるとどうしても熟成期間も短くなるため、逆に言えば飲み頃を迎えるのが早いワインとも言えます。
つまり、ゆっくり飲んでいけば徐々に開いてきますので、無理矢理開かせなくとも十分楽しめます。
2.カラフェに移す
これはワインをボトルから表面積の大きな容器に移すことで、無理矢理開かせるというものです。
これに関しては、先月のブログ“ダブルデキャンタージュ”をご参照ください。
名前:Chateau Lynch Moussas (シャトー・ランシュ・ムーサ)
タイプ:辛口
色:赤
ヴィンテージ:2015
原産地呼称: Pauillac (ポイヤック)
これがChateau Lynch Moussas (シャトー・ランシュ・ムーサ)のファーストラベルになります。
先ほどと同じ生産者ですが、畑が格上のものになり、ブドウの品質も段違いに異なる為、熟成には時間を要します。
本来は若いワインを開けることはお勧めしにくいですが、こういったワインを飲む機会が訪れた際には、カラフェに移して優しく開かせてあげてください。
3.事前に抜栓しておく
飲む数時間前から栓を開けて放置しておくだけでも、結構開いてくれるものもあります。
行きつけのお店だと、事前に抜栓してもらうのもいいかもしれませんね。
名前:Duckhorn Vineyards (ダックホーン・ヴィンヤーズ)
タイプ:辛口
色:赤
ヴィンテージ:2017
原産地呼称: Napa Valley (ナパ・ヴァレー)
こちらは所変わってカリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニョンになります。
Duckhorn Vineyards (ダックホーン ヴィンヤーズ)という、ラベルの可愛らしいワイナリーになります。
ニューワールドの場合、もちろんワインによりますが、カラフェに移すというよりは数時間前に抜栓しておくことにより、香気成分を無駄に失うことなく、むしろ持ち味である果実味が増しますので、こちらの数時間前抜栓がお勧めです。
これはカリフォルニア時代にワインフェスティバルを巡り続けて、その身を犠牲にして覚えました。
大体のカベルネ・ソーヴィニョンが、1巡目よりも2巡目の方が開いて美味しくなっておりました。
3巡目は…覚えていません…。
4.数日~数週間前から調整する
これはかなりマニアックで、プロ中のプロ向けです。
以前日本の、むしろ世界のと言っても過言ではない、イタリアワイン界の大御所の話を聞いたことがあります。
その方は、モノによっては数週間前からコルクを抜いて、そして直ぐに閉めるを繰り返し、微量の酸素をボトル内に取り込ませることで、超微調整を繰り返し、指定の日にドンピシャで飲み頃を迎えさせるという方法を行っていたそうです。
これは熟練の経験者でもかなり難しいです。
名前:Sori San Lorenzo (ソリ・サン・ロレンツォ)
タイプ:辛口
色:赤
ヴィンテージ:2001
原産地呼称: Langhe (ランゲ)
こちらはNebbiolo (ネッビオーロ)という北イタリア ピエモンテ州の地ブドウになるので、番外とはなってしまうのですが、ちょっと面白い特徴を持っているブドウなので、ついでに紹介させてください。
ネッビオーロというブドウは、ピノ・ノワールに見間違うほど色素が薄く、一見ポリフェノールが少ないと思われがちです。
しかし不思議なことに、タンニンはとても豊富で、カベルネ・ソーヴィニョンに負けず劣らずポリフェノールが豊富なブドウです。
有名なワインでは、バローロやバルバレスコがあります。
5.経年変化
しかし何といっても究極は時間が織りなす熟成ですね。
飲み頃を迎えるまで、何年もじっと寝かせておくという事です。
名前:Chateau Mouton Rothschild (シャトー・ムートン・ロートシルト)
タイプ:辛口
色:赤
ヴィンテージ:2008
原産地呼称: Pauillac (ポイヤック)
こちらもボルドーを代表する、いわゆるボルドー5大シャトーであるChateau Mouton Rothschild (シャトー・ムートン・ロートシルト)の2008年。
なんと2040年~2050年まで飲み頃だろうとまで言われているほどの大物!
ここまでのクラスになると、無理矢理開かせてしまうと全く価値を失ってしまうほど、モッタイナイとなってしまいます。
ある有名ワイン漫画でも、当時2000年のものが残酷な言い回しで例えられていましたね。
こういうワインを飲む場合は、セラーでじっくりと長い年月が経つのを待つか、飲み頃のものを購入・オーダーするのがベストです。
最後に、やはり全てのワインにこの作業が当てはまるかと言えば、決してそうとは言い切れないのがワインの難しいところ。
よく、「どのワインがデキャンタージュに向きますか?」という質問を受けるのですが、明確に答えることは出来ません。
生産者、生産地、ブドウの種類、ブドウの収穫年、ワインの保存状態など様々な要因があるため、口頭では答えられないのです。
一口飲ませていただければ…。
これは冗談ではなく、その為にレストランではホストテイスティングというものがあり、またソムリエさんも一口試飲したりして、お互いに合意の上でデキャンタージュなどを行うのが通例となっています。
ある程度の経験があれば、凡その予想は可能ですが、やはり最後は開けてみないとわからない、というのが唯一の答えではないでしょうか。
お家などでは、開けたワインを直ぐに飲み切らずに、何日かに分けて飲んでみると、段々と勘がつかめるかもしれません。
でも美味しいワインって何故か直ぐに空いてしまうんですよね…。
大学時代にも飲んだ以上のビールの缶が残ってたという謎の現象がよくあったんですが、あれは酔っていたからなんでしょうか…。
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