シンガポールに日本人が学長を務める大学があるのをご存じでしょうか。
それがマウントバッテン駅徒歩2分の立地にあるERC Institute。
生徒のほとんどを海外留学生で占め、シンガポールにいながらイギリスの学士資格が最短28カ月で、追加の12ヵ月で修士資格も取得可能。またプログラムの過程でイギリスの提携大学への編入も可能とあって、アジアの学生から今、人気の学校です。
安全なシンガポールで留学して英国学位を取得するという道。まだあまり知られていない選択肢のひとつです。そこでシンガポールの教育業界の最前線で活躍されている現学長の牧野悟さんに、学長に就任した背景や留学プログラムについて伺いました。
Q1.日本人が学長を務めるというびっくりする点について、まずは教えていただけますか?
はい。現在私が学長を務めているERC Instituteは2003年にシンガポールで設立された学校ですが、2019年に日本企業に買収されたという背景があります。私自身は2022年8月から着任し、経営を引き継いでいます。
Q2.牧野さんはもともと教育業界に携わっていたんですか?
私は大阪生まれ大阪育ちのコテコテの関西人ですが、大学から東京に出て、新卒で10年ほど銀行に勤めていました。将来は自分でビジネスをしたいと考えていたこともあって、銀行ではいろいろなビジネスに関わることができ、何よりビジネスに欠かせない数字を見られるようになりました。
親族や友人に教師をやっている人が多いことや、私自身も多くの良い教師に恵まれここまで導かれたと感じており、教育という分野には昔から興味がありました。
シンガポールには2022年8月に来星、やっとこさ1年半といった感じです。昨年の4月から家族(妻・息子・娘の4人家族)もシンガポールに来て暮らし始めました。
Q3.ERC Instituteはどんな学校なんでしょうか?プログラムや仕組みの大枠について教えてください。
我々はシンガポールの私立大学です。
ERCはEntrepreneurship Resource Centerの頭文字で、2003年の設立以来「起業家精神育成」をモットーにビジネスプログラムを中心に提供しています。日本でいう経営学部的な内容ですね。
学士や修士相当のプログラムをメインにしていますが、Foundationと呼ばれる高校相当資格や英語プログラムもあります。最近ではスタッフや留学生向けに日本語のプログラムも開始しました。
Q4.なぜイギリスの学士が取得できるんですか?
シンガポールの私立大学のユニークなところですが、私立大学独自の学士、修士資格を提供することが許可されていないのです。
そのため海外大学からライセンスを受けることになるのですが、我々は現在イギリスのチチェスター大学(University of Chichester)の卒業資格を当地にて発行しています。
つまり、シンガポールにいながらイギリスの大学の卒業資格が手に入るという仕組みです。シンガポール全体では、私立大学が提供している学位はイギリスが多く、そのほかにオーストラリア、アメリカの大学と提携している学校が多いんです。
Q5. 最短28か月で学位(大学4年相当の資格)取得ができるというのは驚きですね! どのような生徒が通っていますか?
我々の学校に限りませんが、現在シンガポールの私立大学の大半の生徒を占めるのは中国人留学生です。
当校個別でいうと、多い順に中国、インド、ベトナム、その他(韓国、カザフスタン等々)、日本人はゼロです。
学生は300人程度で年齢はプログラムによりますが、20代が大半を占めます。買収直後にコロナが始まったこともあり、最近ようやく本格的に日本人留学生や在星日本人コミュニティへアプローチを開始できるようになりました。
Q6.学校の強みは
設立以来、企業との強いネットワークを持ち、企業訪問や起業家をキャンパスに招いた講演を通じて、学生がリアルなビジネスに触れる機会を増やし、机の上の学習をよりリアルに適応させています。具体的には以下の2点が特徴的です。
★企業訪問やゲストスピーカーシリーズ
本校のビジネスパートナー(世界中に100社以上)と接点を持ち、ネットワークを広げる機会があります。既存の従業員やビジネスオーナーと交流する機会を設けて、業界の知識を高めると共に学習意欲を大いに高めることが出来ます。
日本の有名飲食チェーンにも来てもらうこともありますし、有名企業の担当者と直接話せるという機会なので、熱心な学生も多いですね。そこからインターンシップの受け入れにつながることもあります。
★キャップストーンプロジェクト
実在する企業が抱える実際の課題に対し、生徒が授業を通して学んだ理論を駆使して、問題解決に取り組む非常に実践的なカリキュラムです。
具体例として、シンガポールの葬儀業者へのビジネスアイデアを考えるというプロジェクトがありました。
利用者のニーズを探るために老人ホーム等を回ってアンケートを取り、業界のサービス金額の不明瞭さについて着眼し、明瞭な料金提示のためのサービスのパッケージ化の提案をしました。するとその1ヶ月後くらいに、業界に対して“費用を明確にするように”という政府からのお達しがあったんです。
自分たちのリサーチをもとに提出しアイデアがきちんと認められたことで、学生たちのモチベーションは一気に上がりました。
Q7.入学試験はありますか?
日本のような入学試験はありません。入学要件を満たせば試験無しで入学できます。
留学生にあたっては英語のレベルを満たす事が重要になってきますが、IELTSをメインの基準にしており、保有していない学生は独自の英語テストを受けることで、入学が可能になります。
Q8.学校には日本人スタッフが常駐しているんですか?
日本人は私のみですが、基本キャンパスにおります。
ただ、日本語が話せるスタッフは3名ほどおります。
Q9.ERCが留学生に選ばれているのはなぜだと考えますか?(カリキュラム、実地が多い?値段、期間、校風など)
Entrepreneurshipと言えばERCといえば大げさですが、ビジネススクールとしての評価は高いと言えます。特に企業訪問やゲストスピーカーの企業とのつながりについてはほかの私立大学でやっているところはほぼないと思います。
そういった点で、自営業の家系の学生たちに比較的多く選ばれていると思います。
彼らは自国で親がビジネスをしており、この大学で経営を学び、学生同士または企業とのネットワークを作って帰国後に親の後を継ぐ、または自分でビジネスを始めるという方が多いです。
また、クラスあたりの生徒の数も少ないため講師がそれぞれの学習進捗に合わせてしっかりフォローできる体制も揃っています。
Q10.シンガポールは生活費が高いとはいえ、安全で住みやすい国ですよね。学生が留学先にシンガポールを選ぶメリットはなんだと思いますか?
はい、日本人学生の場合高校卒業後、英語を含む入学要件を満たすという前提ですが、現時点では28か月で我々のイギリスの提携大学(University of Chichester)の学士を習得出来ます。ちなみに弊校の英語プログラム(レベルによりますが最長8か月)からスタートしても36か月(3年)で学士取得が可能です。
生活費も高いと言われますが、イギリス本国や、アメリカ、オーストラリアに留学するよりはコストは抑えられると思いますし、地理的文化的にも近く、何より安全面では間違いないと個人的には感じます。また英語という点でも、シンプルな単語や文法で話す方が多いのでそこまで苦手意識を持たず英語に親しめる環境かと思います。
Q11.日本の学校とのコラボレーションはあるのでしょうか?
既に山梨学院大学とは提携がありまして、昨年夏から2度、短期留学で学生が来られました。
短期留学については他の大学や高校とも話を進めているのでこれから増やして行きたいです!
また既にイギリスのパートナー大学とやっているような提携を日本の学校とも進めたいと考えています。(例・シンガポールで2年、残りの2年は日本で勉強して日本の大学の学位を取得する、逆に日本で2年、3年目にシンガポールに来て英国の学位を取得する、等)
Q12.卒業後はどのようなキャリアに進む生徒が多いのでしょう?
我々のモットーである起業家精神にも表れている通り、卒業後は親の事業を継いだり、自分でビジネスを始める人も目立ちますね。
Q13.ゆくゆくはどういう学校にしていきたいですか?野望を教えてください。
「世界への窓口」的な学校を目指していますね。
学位取得という手段を通じて、シンガポールを起点にアジア各国、欧米を繋ぎ、海外進学、海外就職というオプションを(特に日本の学生にも)広げられればと思います。
そのためにはもっと多くの国から学生を募集して、提携する大学ももっと増やす必要があるので頑張ります!
Q14.日本から留学する場合に準備しておくと良いことは?
健康な精神と体。
Q15. 日本で海外留学を考えている人に一言お願いいたします。
考えるのを今すぐやめて、まず留学してみたら良いかと思います、30分で決断しても1年考えて決断してもあまり結果は変わらないと思います。もちろん弊校に来ていただきたいですが、どこでも良いと思います。行動あるのみです。
私もず~っと考えているだけで、海外に出たいと思いつつ、英語が出来ないとか、会社が駐在の機会をくれないとか、家族がいるから、とかグズグズして周りのせいにして本格的に自ら行動を起こすのにだいぶ時間が掛かりました。 ただ、一歩踏み出すと(私の場合は転職)、あっという間にシンガポールにいました、銀行という安定した環境から、シンガポールの学校経営という、今では非常に楽しく刺激的な日々(半強制的に能力が高められる環境)を過ごしています。
何か準備が整ってからとか言っていると、実際一生整わないです。まず留学すると心に決めてアクションしてみましょう(留学エージェントの方に相談するとか、私に連絡してみるとか)。沢山悩むほど人生は長くないです。留学したいと思ったら、留学してください。
そして重要なのは自分で決めること。周りに相談するのは必要ですが、“最後は自分で決めた”ということが、留学後にぶつかる困難を乗り越えるエネルギーになります。
Q16. 最後に、シンガポール在住の日本人に向けたプログラムについて教えてください。
シンガポールにお住まいの日本人のお子様のスクールホリデー、夏休みで日本からシンガポールに旅行にいらっしゃる際にお子様をお預かり出来るように、校舎を利用したホリデーキャンプを始めました。アートや英検対策等のプログラムを行っております、この8月にも開催する予定ですので、是非ERCiのキャンパスに遊びに来てください!!
がはは〜という明るい笑い声が印象的な牧野さん。
元ラガーマンで自ら”Mっ気があり”追い込まれたときに力が湧いてくるタイプと話してくれました。異業種からの学校経営かつ家族を伴って飛び込んだ海外生活で苦労することも多いはず。でも、だからこそ牧野さんならではの視点で、新しい学びの場を作り上げていくことができると感じます。日本人学生にとっても待ち望まれる、もっと軽やかに世界へ羽ばたける拠点づくりに期待しています!
牧野 悟
日本で銀行に10年勤め、2022年8月よりシンガポールで現職。
E-mail: enquiry@erci.edu.sg
ERC Institute
229 Mountbatten Rd, #01-30, Singapore 398007
マウントバッテン駅徒歩3分
TEL : +65 6349 2727
ウェブサイト: https://erci.edu.sg/
メール:enquiry@erci.edu.sg