【クラフトビール解体新書 vol.19】オープンラッシュはまだまだ終わらない!新店舗特集パート3!

前回、前々回と、最近オープンしたお店を紹介していきましたが、まだネタがもう一回分ありますので、今回もしつこく新規オープン店を紹介していきたいと思います。

新規といっても、原稿を書くのが遅くなってしまい、開店半年以上経ってしまったお店が多いですが、それでもどのお店も、激動のコロナを乗り越えて堂々のオープンを果たした猛者ばかり。まだまだ知られていない隠れた名店たちです。

シンガポールのクラフトビール市場はさらに進化を続け、ローカルブリュワリーも増えていますし、輸入業者も輸入されるビールたちも、加速度を増してその種類を増やしています。そんなに輸入するビールがあるのか?そうですね。クラフトビールのブリュワリーはまだまだ爆発的に世界中で増えています。

特にシンガポールはオーストラリア・ニュージーランドからの輸入が盛んです。どちらもクラフトビール大国ですので、今や市場はオーストラリア・ニュージーランドからのビールであふれかえっています。

そういったわけで、シンガポールのクラフトビールファンたちは、新しいネタを常に探しています。

そこを狙って次々と新しいお店が現れるのですね。

今後も楽しみです。

それでは今回もお楽しみ下さい!

<広瀬礼仁>
シンガポールのクラフトビール専門店「SG TAPS」店長兼ウエイター。
当地シンガポールにて、クラフトビール業界に5年程関わったのち、2018年4月に独立。ビールを始め、日本酒、ワイン、ウイスキーなど、アルコール文化に対する愛は誰よりも広く深いと自負している。

[Halfpipe Skateboard Shop, bar & Cafe]【閉店】

111 Somerset Rd, #01-15, Triple One Somerset, Singapore 238164

スケートボードショップとクラフトビールとは、いきなり思いもかけない方向からコンセプトを作ってきました!それだけではなく、ここは美味しいコーヒーも提供しているという三段構え!

元々ここのすぐ隣が、たくさんの若者スケーターたちが集まる有名なスケートボード場なので、スケートボードのショップができるのは納得なのですが、そこにクラフトビールを加える発想が、新しいもの好きのシンガポールらしいですね!

その発想が功を奏しているのでしょうか?店内の席数が少ないこともあって、お店は常に満員のように見えます。

スケボーをプレイし終わった反省会か、ちょっとやんちゃそうなおしゃれボーイズ濃度100%の店内は、アラフィフの太っちょおじさんにはあまりにもアウェー感が強く、ほぼ羞恥プレイのような状態で、クラフトビールも味を感じませんでした(笑)!

というのは半分冗談で、もちろんおしゃれボーイズは私の事などなんとも思っていないでしょうが、今までに味わったことのない感覚でビールを飲めたのは確かです。

こちらのお店はドラフトビールは提供していないのですが、80種類を超えるボトルと缶のラインナップを揃えており、アメリカ・イギリス・オーストラリアなど、リーズナブルな10ドルくらいの物から、30ドルを超えるマニアックなビールまで、なかなかのバラエティーです。

特に、最近うけているような、各国の新しいブリュワリーの品ぞろえが多いようですので、近頃のクラフトビールのトレンドを勉強するのにもピッタリです。何より気軽に入って一杯飲める雰囲気がいいですね。

おつまみは提供していませんので、大勢で来たり長居するには全く向かないお店です。そもそもお店としてもそのような客層は想定していないと思いますので、まずはオーチャードの買い物のついでにでも、サクッと一杯試してみましょう。ちょっと若返った気持ちになりますよ!

 

  • 価格:まあまあリーズナブル
  • タップ数:無し
  • クオリティー:良い
  • 雰囲気:スケボーしない人にはアウェー
  • トイレ:モールのトイレなので遠い
  • アクセス:サマセット駅すぐ
  • 一口ポイント:かなり珍しいタイプのお店

[Freehouse]【閉店】

10 Gemmill Ln, Singapore 069251

テロックアヤ付近の2階にあった隠れ家的タップルームが、近所に移転して再オープン。

名前は同じFreehouseですが、雰囲気はガラリと変わりました。

以前は、あえてチープさや遊び心をを出した手作り感のあるポップな内装でしたが、移転に伴いイメージを一新、本格的カクテルを提供するバーカウンターを中心に据え、間接照明やインテリアもカッコよく、グッと大人のムードのお店に様変わりしました。

移転前よりタップ数をやや絞り、その代わりレアでユニークなビールにフォーカスしています。

自社輸入の、他店ではあまり見ることが出来ない、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスなどのビールを多くそろえています。

味の面でも、ホップがものすごく効いた濃厚なIPAや、複雑な味の樽貯蔵ビール、サワーエールなど、飲みやすい大衆的なビールよりも、強い個性を持った先鋭的なビールを集めています。

奥の方にもテーブル席の部屋があり、十分な席数を確保していますので、あり程度大きなグループにも対応できそうです。

また、キッチンがオープンで目立つ構造をしており、たくさんのキッチンスタッフが忙しそうに働いていて、フードにも力を入れているのが一目でわかります。クリスピーな沢蟹のチリソース、マグロのタルタル、鴨ハツの柚子胡椒など、種類は多くありませんが、創作性が豊かで完成度が高いフードが並びます。メニューは今後もブラッシュアップし続けていくそうなので、さらに期待できそうです。

経営元がクラフトビール輸入業者という強みをいかんなく発揮して、他店では味わえないビールで差別化を図る、ビールの個性を最前に置いたお店です。

すぐ近くに、バーガー・バー、リトル・クリーチャーズや、この次に挙げるバンカー・バンカーなどがあり、徒歩三分のクラフトビール圏を形成していますので、4軒まとめてハシゴもよいのではないでしょうか。

  • 価格:普通
  • タップ数:16
  • クオリティー:とても良い
  • 雰囲気:しゃれたバーのような雰囲気
  • トイレ:きれい
  • アクセス:テロック・アヤMRTから5分
  • 一口ポイント:実は結構老舗なクラフトビールバー

[BUNKERBUNKER!!]【閉店】

31 Club St, #01-02 Emerald Garden, Singapore 069468

以前、プリンセップ・ストリートのDECKSという、若者向けのユニークな建物の中にお店を構えていて、建物の撤去に伴い移転のためしばらくクローズしていましたが、このほどクラブストリートの入り口近い場所に再びオープンしました。先に挙げたフリーハウスのすぐ近くになります。

以前の店舗もかなり前にこちらのコラムで紹介していますが、こじんまりとした手作り感あふれる店内に、ずらっとボトル・缶のビールが並び、店内で会計を済ませ、これまた学園祭の露店のような遊び心あふれる手作りのガーデン席で飲むという、若者に特化したミニマルなお店でした。

新店舗ではそのミニマル感をさらに凝縮させ、小さなキオスクスタイルの、ほぼ「俺の部屋」なお店になっています。

まず、あまりにも小さい店舗かつ予想外の場所にあるので、なかなか見つけづらいです。

場所としては「リトル・クリーチャーズ」の裏口あたりにあり、昔からクラブストリートの入り口にある中華的デザインのコンドミニアム?の駐車場入り口横の、小さなスペースになります。

目立つ看板などが無く、入り口ドアに店名が直接貼ってあるのでちょっとわかりにくく、見つけられたとしても、一瞬入るのに躊躇してしまいそうな外観です。

ドアを開けるといきなりビールのショーケースがドンとおいてあり、四畳半ほどの店内はどう見ても座れるのは1人か2人。外席もおいていないので、入り口下の階段に座って飲むか、路肩のちょっとした花壇のようなスペースに腰掛けるか、その辺で立って飲むかという、以前にも増してさらにストリート系に特化した、「空の下イコール客席」的な、かなりワイルドなスタイルとなっています。

フードのメニューはないですが、コーヒーなどは提供しているようです。

それでも、ボトル・缶で100種類程のバラエティーを揃えていて、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、ベルギーなど幅広いラインナップを扱っていますので、ちょっとした時にふらっと入って一杯飲むには面白いと思います。

ターゲットを絞ったお店ですので、普通のバーのように飲めることは期待できませんが、お近くにお住まいの方は、珍しいクラフトビールのボトルショップ的な感じで試してみてもいいのではないでしょうか。

  • 価格:普通
  • タップ数:無し
  • クオリティー:よい
  • 雰囲気:ワイルド
  • トイレ:不明(おそらく無い)
  • アクセス:クラブストリートの入り口
  • 一口ポイント:超隠れ家ボトルショップ

[Welcome Ren Min]

1 Kadayanallur St, Unit No. 01-33 Maxwell Food Centre, Singapore 069184

数年前から、マックスウェルとオールド・エアポートロードの2つのホーカーセンターに出店していた「サードカルチャー・ブリューイング」がコンセプトを変更し、店名も新たにリニューアルオープンしました。

「サードカルチャー・ブリューイング」は、スミスストリートタップに続き、シンガポール独自の「ホーカーセンターのクラフトビール店」というジャンルを定着させた、その道のパイオニアです。

欧米系やアジアのクラフトビールをまんべんなくドラフトで提供し、様々なホーカーセンターのフードと合わせて気軽に楽しめるという、カジュアルで飽きの来ないスタイルを確立しました。

その「サードカルチャー」がこのほどコンセプトを一新し「レンミン」として再デビューを果たしました。

レンミンとは、漢字で書くと「人民」だそうで、やはり大衆的にビールを提供することが名前の由来となっているようです。

リニューアルに関しての一番大きなポイントは、自社の「レンミン」ブランドのビールを作って提供しているという所でしょう。作ってといってもシンガポール国内ではなく、提携するイタリアのブリュワリーで醸造し、樽詰めしてシンガポールに輸入しているとのことでした。

「レンミン」ブランドビールは3種類あり、セッションIPA、アメリカンIPA、グリセットとなっています。グリセットは耳慣れないジャンルですが、ベルギースタイルのホワイトビールです。

どれも非常にしっかりと味が組み立てられており、ホーカーの濃い目の味付けと合わせやすい、さっぱりしつつもきちんと味の主張がある、まさに「人民」のためのビールという感じでした。

価格帯はパイントで12~15ドルくらいです。

ホーカーセンターでのクラフトビール体験はとても楽しく、ホーカーのような超大衆的なほぼ屋外の空間で、クラフトビールを常に提供できる衛生環境と保管環境が維持されている、ということは実はかなりすごいことなのです。

これは本当にシンガポールのホーカー文化の賜物であり、他国ではなかなか成しえないありがたいことだと、いつも感謝して飲んでいます。

マックスウェルもオールド・エアポートロードも、歴史あるホーカーだけに有名店や老舗店が目白押し。行列店も数多くあります。少し下調べをして、そういう店舗をごっそり総ざらいして贅沢に飲むのも楽しいでしょう。

ちなみにマックスウェル店の隣は「ラーメン大将」という知る人ぞ知るホーカーラーメンの第一人者で、ホーカーと侮るなかれ、日本人の舌も唸らすほどの美味しいラーメンをリーズナブルに提供しています。餃子や唐揚げなどおつまみも充実してますので、ビールと合わせるのに持って来いです。ぜひ一緒に味わってみてください。

  • 価格:リーズナブル
  • タップ数:12
  • クオリティー:良い
  • 雰囲気:ホーカーセンター
  • トイレ:ホーカーとしてはまあまあ
  • アクセス:もうすぐ目の前に駅が建つ
  • 一口ポイント:超有名ホーカーセンターでクラフトビールを

[Kalonn]

2 Tai Thong Cres, #01-03, Singapore 347836

クラフトビール店としてはとても珍しい場所にオープンしたお店です。

ゲイランとトアパヨーの中間地点とでも言ったらよいのでしょうか?とにかくクラフトビール店としてはあまり聞きなれない場所にありますので、この近くにお住まいのクラフトビールファンには朗報だと思います。

一面ガラスで見通しの良い店内は陽光が心地よく、テラス席もあるので日が落ちる前の早い時間から飲み始めるのが良い感じです。

ドラフトは4種類で、シンガポールのライ&パイントを主に提供しているそうです。それ以外にもクラシックビールファンのためにギネススタウトも提供しています。

パイントは16ドルほどで、ハッピーアワーには価格が2ドルほど安くなるようです。

ボトル・缶の種類も20種類程あり、オーストラリアやイギリスやシンガポールのビールなど、ドラフト以外のバラエティーも用意されています。こちらもハッピーアワー時は2ドルの割引があります。

フードは主にフィンガーフード。チキンウイング、焼き鳥、チーズ盛り、枝豆など、シンプルながらどことなく居酒屋感のあるメニューで、オーナーさん自らが甲斐甲斐しく作って持ってきてくれました。

ドラフトを10,20種類そろえているようなクラフトビール専門店とは少し違いますが、ローカルビールを応援する姿勢は共感できるものがあり、何よりも地域的にこのエリアには貴重なクラフトビール店ですので、ぜひ頑張ってもらいたいと思います。

ちなみに目の前に有名なプラウンミーのお店がありますので、こちらも締めにお試しください。

  • 価格:まあまあ
  • タップ数:4
  • クオリティー:まあまあ
  • 雰囲気:気軽に立ち寄れる
  • トイレ:モールの中なのでやや遠い
  • アクセス:紫ラインPotong Pasir駅から徒歩2分
  • 一口ポイント:地域的にとても貴重なクラフトビール店

[Mikkeller Singapore]【閉店】

Chinatown Complex Food Centre, 335 Smith St, #02-058, 050335

ミッケラーとは、デンマークの有名クラフトビールで、今や世界的な規模になっている巨大なブリュワリーです。

世界で一番有名なクラフトビールブリュワリーと言っても過言ではなく、常に挑戦的で超個性的なビールを目指す揺るがない姿勢と、カラフルでキュートなキャラクターをモチーフとしたラベルデザインで、クラフトビール界のトップブランドあるいはアイコンといった存在となっています。

そのミッケラーは、本国デンマーク以外に、東京、台湾、バンコク、シンガポールなどに直営店を展開しています。

シンガポール店はその中でもこじんまりと運営しており、いかにもカッコよく作りこんだ他国の店舗と違い、手作り感のある居心地の良い空間でした。が、惜しまれながら数年前に一度閉店してしまい、その後の消息がしばらく絶えたままでした。

それがこの度突然の復活となり、島内のクラフトビールマニアたちを狂喜乱舞させることとなりました。

なんと、復活の場所はあまりにも意外なホーカーセンターの中。

経営元がスミスストリートタップになったので、そちらの店舗と合わせると20種類以上のドラフトビールを楽しめる、チャイナタウンフードセンターの数多くの名店とクラフトビールを一緒に味わえる、軽く一杯気軽に味わえるようになったなど、カムバックを待ちわびたファンたちの期待をいい意味で裏切るサプライズとなりました。

バンコクや東京では、少しハイスペックでちょっとだけ敷居が高く感じてしまうミッケラー直営店ですが、シンガポールでは肩ひじ張らずに楽しめます。これはシンガポールならではですね。

1パイントは16ドルからと、ホーカーセンターとしては少し高額に感じてしまうかもしれませんが、ミッケラーのビールは元々の価格が高いので、この価格で税込みはとてもリーズナブルです。

ちなみにこのホーカーセンターは、Claypot & Cooked Food Kitchen #02-152(土鍋小菜)、Fatty Ox HK Kitchen #02-84(牛煮込み麺)、Lian He Ben Ji Claypot #02-198/199(土鍋の炊き込みご飯)、Hong Kong Mongkok Tim Sum #02-097(点心)、Liao Fan Hong Kong Soya Sauce Chicken Rice & Noodle (Hawker Chan)#02-126(ダックヌードル・ライス) などが有名店です(他にもたくさんありますが)。

  • 価格:安い
  • タップ数:10(遅い時間は品切れ多し)
  • クオリティー:すごく良い
  • 雰囲気:完全にホーカー
  • トイレ:ホーカーレベル
  • アクセス:チャイナタウン駅より徒歩5分
  • 一口ポイント:ミッケラーロゴのマーライオンバージョンがかわいい

毎度更新が遅くなってしまってすみません!

紹介したいネタはもう山のようにあって、もっといろいろな店を知ってもらうべく頻繁に更新したいのですが、筆の遅さがどうにも…。

こうしている間にもまた新しいお店が出来ているので、もどかしいばかりです。

新店舗ラッシュが続く反面、クローズしてしまうお店も多いのがシンガポール。このコラムの少し前の記事を見て、紹介されているお店に行ってみようかなと思ってくださった方は、一応インターネットなりでお店の近況をチェックすることをお勧めします。それくらいサイクルが激しいシンガポールの飲食業界ですので。

私のお店SG TAPSも全く他人ごとではありません。頑張らねば。

ということで、また次回お会いしましょう!


シンガポールのおすすめクラフトビール

過去のクラフトビールコラムはこちら⇩
https://byst.sg/category/blog/food-drink/craft-beer/

SG TAPS
島内唯一シンガポールのクラフトビールが18種類、生で飲めるシンガポールビール専門店。 ボトルビールでは更に、日本、香港、ベトナム、台湾、インドなどのクラフトビールを揃え、アジアのクラフトビール文化を底上げしていきたいと考えている。 ラクサピザ、奄美鶏飯風チキンライスなど、ローカル、和洋食を絶妙に組み合わせたユニークなフードも人気。
https://www.facebook.com/SGTAPS13/

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