シンガポールを代表するトップソムリエから楽しく学ぶ大人のたしなみコラム vol.4 お茶とワインを記憶づける〜 テイスティングテクニック〜

こんにちは!実はワイン同様20歳前半までコーヒーも飲めなかったソムリエ、渋谷です。 

ワインはそれまで美味しいものを飲んだことがなかった、というのが飲めなかった理由だと思っています。

きっかけとなったのが3月のワイン講座のテーマ“カリフォルニアワイン”だった、というのはしつこい位にお話しておりますが、やはり現地で飲むワインというのは格別ですね。

でもコーヒーは何でしょうね、さっぱりわかりませんが、やはりワインを好きになったのと同時期から飲めるようになっていったと思います。

どちらも飲めるようになってからは、夜にカフェでブラックを飲みながらワインの勉強、帰りにスーパーに寄って家でワインのテイスティング、というのが日課になってしまいました。

その頃から何となくカフェ通いが小さな趣味になりましたが、昨年から外出も控えるようになり、その機会も減ってしまいました。

ここ最近では、家でコーヒーをサイフォンやらエスプレッソやらで入れておりますが、たまにはコーヒー以外が欲しくなります…。

そんな折、偶然にも色々なお茶を頂く機会が多くなり、お陰でお茶にも色々な香りがあるなと気づかされました。

というわけで今月のテーマ、“お茶”について探ってみたいと思います。

先月はワインの香りで掴みにくいお花にスポットを当てましたが、お茶もわかりやすいものもあれば、非常にわかりにくいものもあります。

まず、日本人の皆さんがお茶と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか?

多くの方は、最初に緑茶を想像すると思います。

一般的な飲み方は、急須に茶葉とお湯を入れて数分待って、湯呑に7分目前後ほど注ぐ感じでしょうか。

茶葉によって特徴は異なりますが、湯呑に注ぐと温度が数度下がりながらも湯気が立ち上り、緑茶独特の新緑や雨上がりの森の香り、玄米茶なら甘い穀物、ほうじ茶なら腐葉土の香り、など同じ日本茶でもワインの様に、多種多様な楽しみがあります。

子供の頃の記憶では、円筒型の缶を開けると茶葉が入っていて、底の方には粉状になった茶葉が溜まっていました。

茶葉の粉が多く入ると色が濃くなっていましたね。

この様に拙い数行の文で書いたとしても、大体の方は緑茶がどんな色・香り・味か、というのを想像、むしろ思い出せたのではないでしょうか。

これが、ワインテイスティングに重要なポイントになります。

とっても簡単な理屈ですので、ご紹介しますね。

渋谷 大輔(しぶや だいすけ)

2020年 アジア – フランスワイン ベストソムリエコンクール 準優勝
SUN with MOON Japanese Dining & Cafe所属

<資格>
Certified Sommelier by Court of Master Sommelier
WSET Advanced Certified in Wine & Spirits
インターナショナルワインチャレンジ酒部門 准審査員
WSET Advanced Certified in Sake

<受賞歴>
2019年 シンガポール – フランスワイン ベストソムリエコンクール優勝/アジア大会シンガポール代表
2019年 シンガポール – アメリカワイン ベストソムリエコンクール優勝

重要なポイントの前に、お茶の話題に交えて、店舗のご紹介をさせていただきたいと思います。

3月一杯、私の担当するお店SUN with MOON Japanese Dining & Caféは改装工事でクローズしており、4月1日(木)にリニューアルオープンいたします。

店舗は既に15年を迎えており、これまでにも定期的に改装工事を行ってきましたが、今回はちょっと思い切りました。

入り口部分にバーカウンターを設けるのですが、私が最近力を入れている新しい試み、日本茶を、カフェタイムの時間に楽しんでいただけます!

日本茶は日本茶なんですが、普通に出しても面白くない、と考えてしまうのがソムリエの悪い癖。

茶葉はお茶処、静岡県から取り寄せておりますが、日本に30数名しかいないという日本茶鑑定士さんが選定してくださった茶葉を使用

大げさではなく、日本最高品質の茶葉を使用していると自負しております。

使用する茶葉の一つは、日本一標高の高い茶畑梅ヶ島で栽培されており、そこは標高が高いゆえに害虫被害がほとんどなく、殺虫剤の使用が必要ないという、サスティナブルな茶葉になります。

お茶が美味しいのは当たり前、ならばその個性を活かせないだろうかと思い、悩み抜いた末、4種の茶葉を9種類の方法をで提供することとなりました。

しかも使用するグラスは、有名ワイングラスメーカー Riedel社のものを飲み方に合わせ、甘味や香りの立ち方を考え種類を使い分けております。

・中でも私のお気に入りは、深蒸し茶のサイフォン!グラスはマティーニ!

とてもエレガントな香りで、かなり状態の良い超高級ワインでしか感じられないような、別次元にいるかのような高揚感が得られます!

・煎茶をエスプレッソに!なんとコニャックグラスで!

摂取できるカテキンは通常の緑茶の数倍!

・さっぱりしたいときはアイスドリップ煎茶を!

これはかっこよくロックで!

・本物の抹茶って苦くないんですね!むしろ甘い!

さすがにこれは抹茶椀で…。

これだけでも楽しいのに、お水も茶葉の産地同様、南アルプスの天然水を使用しているんです。

つまり、

静岡茶 x Riedel x 南アルプスの天然水

という最強の組み合わせです!

間違いなくシンガポールでは今までにない、むしろ世界でも見つけられないと言ってもいいほどに、私の個性が大暴れしているお茶の世界を是非ご堪能ください。

すっかりお茶のお話で興奮してしまいましたが、ようやく本題です。

今月のワインも価格や難易度、手に入れやすさなどを私の主観で★を付けています。少しでも参考になればと思います。生産者や購入場所などにより価格は大きく振れますが、およそこんなイメージです。

それからワインの写真はイメージになりますが、全てシンガポールで手に入るものになっています。

☆                         ~$30
☆☆                      $30~$50
☆☆☆                  $50~$100
☆☆☆☆               $100~$200
☆☆☆☆☆           $200~

ここまでお茶=緑茶という流れでお話をしてきましたが、逆に多くのアジア圏外の方々には緑茶の香りは想像しにくいかもしれません。

私たちがそれを容易に想像できるのは、やはり子供の頃から慣れ親しんでいるからにほかなりません。

このように、テイスティングに大事なのはどうしても、過去の経験値になります。

その実体験からの記憶を、いかにしてサッと思い出せるかが、テイスティングのポイントで、本当にそれだけで良いテイスターになれるんです。

でも知っているはずなのに、言われるまで気づかない、というのは私たちプロでもよくあることです。

そのギャップを埋めるために、普段から記憶の整理をする、という心構えが大切だと日々思い知らされています。

今月はお茶に関して記憶とワインを紐づけて整理していきたいと思います。

まず誰もが一度は飲んだことがあるはず、紅茶から。

ワインで見つけられやすい香りは、入れたての温かい紅茶というよりは、“紅茶を抽出した後の茶葉”の方が多いです。

Condrieu(コンドリュー)

タイプ:非発泡
色:白
価格:★★★★
手に入れやすさ:★★

紅茶の香りを探すときは、どんな時に紅茶を飲んだかな?と思いだしてみて下さい。

カフェで勉強中に?学生時代に友人と喫茶店で?買い物しすぎて途中足が痛くなってふらっと入ったお店で?

など色々なシチュエーションがあるはずです。

一番楽しかった時を思い出してみて下さい。

そしてそれは、誰が入れてくれて、どんな人と飲んだ紅茶でしょうか?

この様に、テイスティングに慣れていない方は、各香りごとにシチュエーションを思い出せるようにしておき、想像しやすい楽しい思い出をパッと浮かべられるようにすると、どんどん香りが頭の中に膨らんできます。

それが慣れてくると、何も考えなくてもワインを嗅いだ時に自然と紅茶が浮かぶようになります。

むしろ紅茶を飲むとワインが欲しくなるかもしれません。

この様な感じで、次のお茶を考えてみましょう。

カモミールティーも良く飲まれていますね。

ワインの場合では、お花の香りにたとえられますが、カモミールのお花はカモミールティーとして捉えて遜色ありません。

カモミールティーの香りは、先月は南アフリカのChenin Blanc (シュナン・ブラン)を紹介しましたが、フランスのAlsace (アルザス)地方のリースリングにもよく出がちです。

Riesling (リースリング)

タイプ:非発泡
色:白
価格:★★
手に入れやすさ:★★★★★

カモミールティーは飲みなれないと苦手な方も多いのではないでしょうか?

苦手な香りというのは、逆に覚えやすいものなんです。

これは個人の考えですが、そして恐らく本能的なものだと思いますが、嫌いなものを勝手に毒と思いこんでしまっているため、次からは誤って口にしないように覚えてしまうのだと考えています。

そういう私もカモミールティーは小さい頃は苦手でしたので、いつでもその香りを思い出せます。

ジャスミン茶は沖縄ではさんぴん茶と呼ばれており、日本人にも好まれる味かと思います。

私も沖縄へ旅行した際にはよく飲みましたし、シンガポールでも中華へ行くとよく出てきますね。

想像の通りエキゾチックな香りのこのお茶ですが、先月のジャスミンの花の時には、北イタリアのPinot Grigio (ピノ・グリージョ)を紹介しました。

今月は、スペインのAlbariño (アルバリーニョ)を紹介します。

Albariño (アルバリーニョ)

タイプ:非発泡
色:白
価格:★★
手に入れやすさ:★★★★★

このワインの特徴は、何といっても桃の香りです。

4月の講座はスペインを予定していますので、ちょっと先取りですね。

桃やジャスミン茶が実際に見つかるか、クラスで一緒に探してみましょう!

次は珍しいプーアル茶ですが、ちょうど今月のクラス中に、Zinfandel (ジンファンデル)から見つけることができました。

プーアル茶葉はワイン同様熟成するようですが、そこまでとは言えないまでも、プーアル茶の風味を凝縮させた感じでした。

Zinfandel (ジンファンデル)

タイプ:非発泡
色:赤
価格:★★★
手に入れやすさ:★★★★★

Wanna Zin tonight!

これはクラスへ参加してくださった方にしか通じないネタです…。

次は、果物でも不思議なことに、お茶と感じる例を紹介します。

お茶、つまり茶葉とはどのような状態でしょうか?

乾燥していますよね。

という事は、乾燥した果実のイメージが、フルーツティーにつながるという事です。

乾燥したというよりも、どちらかというと枯れたという表現が適していると思います。

その枯れた果実は、熟成したピノ・ノワールから見つけられます。

一例を挙げると、こちら。

 (写真は一例ですので、一般的なワインの評価になります)

Pinot Noir (ピノ・ノワール)

タイプ:非発泡
色:赤
価格:★★★
手に入れやすさ:★★★★★

これでもまだ若く、さらなる熟成のポテンシャルはありますが、既にドライな感じが出始めています。

ピノ・ノワールらしいイチゴやサクランボの香りが豊富なワインですが、ラズベリーも特徴の一つ。

熟成の過程で、ラズベリーティーなどフルーツティーが生まれます。

もちろんお手頃なピノ・ノワールでも見つけられますが、総じてフランス産のものが、わかりやすいです。

では私が力を入れている緑茶はどうでしょうか?

煎茶など緑色の水色のお茶は、ワインから見つけられたことがありません。

恐らくあるとすれば、とても若いボルドーのような、フレッシュであり青々とした強い香りを放つものではないでしょうか。

実際に存在する香りなのかわかりませんが、探し続けてみたいと思います。

しかしほうじ茶のような加熱して乾燥されたタイプは、赤ワインの熟成の香りとして、近いものを感じることがあります。

Sous Bois (スー・ボワ)、森の下草なんて直訳されますが、腐葉土のような香りとして、この焙じ茶を捉えることができます。

よく熟成したワイン、例えばBordeaux (ボルドー)の1990年代前半ともなると、はっきりとわかりやすく捉えることが出来ます。

Ch. Beau-Sejour Becot (シャトー・ボーセジュール・ベコー) 1993年

タイプ:非発泡
色:赤
価格:★★★★★
手に入れやすさ:★

ですがこういった熟成の香りだと、ワインも古く、価格も高めです。

中々飲む機会も少ないですが、古めのワインを飲まれる際には注意深く観察してみて下さい。

という感じで、ワインからも様々なお茶が見つかります。

普段から嗜む機会のあるお茶だからこそ、実体験と紐づけやすく、テイスティングでイメージしやすくなります。

中には探しにくいものもありますが、普段から意識して色々な香りと体験を結びつける癖をつけてみて下さい。

熟成したワインを飲む時の為に、焙じ茶から練習をしておきましょう!

次回の講座のお知らせ

シンガポールを代表するトップソムリエから楽しく学ぶ
大人のたしなみ講座 『ワインの会』
~太陽と情熱のスペインワイン~

今回学べる内容はこちら⇩⇩⇩
1. ボルドーが育てたスペインワイン銘醸地
2. リアス海岸の桃が香るワイン
3. スペインのスパークリングワイン カバ
4. 地方で名前が変わる、不思議なブドウ
5. 酒精強化ワイン シェリーとベネンシアドール
6. 意外と知らない、スペインから来た和食

4月16日(金)
夜の部 19:00~20:30 (90分) 

4月19日(月)
昼の部 13:00~14:30 (90分) 
夜の部 19:00~20:30 (90分) 

4月21日(水)
夜の部 19:00~20:30 (90分) 

過去回に参加できなかった方向けクラス

 過去回リバイバルクラス 

~ワインの歴史を塗り替えたカリフォルニアワイン~
4月14日(水)
夜の部 19:00~20:30 (90分)

✨今回学べる内容はこちら⇩⇩⇩
1. ニューワールドワインの味わい
2. Napaだけではない、魅力あふれるワイン産地
3. 移民が育んできたワイン文化
4. サスティナブルなワインとは?
5. フランスワインに勝利したカリフォルニアワイン達
6. Zinfandelの秘密と合言葉

参加費:1人$80 二人以上で申し込むと1人$70
場所:b. studio (チャイナタウン駅から徒歩3分)
Blk 34 Upper Cross St, #04-150, Singapore 050034

お問い合わせ&お申し込みは
📨メール teppei@byst.sg
WhatsApp +65-8138-4613

過去記事はこちらから
Vol.1 ~ワインとお正月ペアリングのコツ~
Vol.2 ~北海道地図から見るワイン~

SUN with MOON Japanese Dining & Cafe

Address: 501 Orchard Rd, #03 – 15, Singapore 238880
Tel: 6733 6636
https://www.sunwithmoon.com.sg/

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