【2021年5月アップデート版】
皆様、こんにちは。
今月も楽しくビールライフをエンジョイしていますか?
ブリューパブという言葉は普段あまりなじみがないかも知れませんが、ビールの醸造所・ブリュワリーがその場で提供しているビアパブの事をこのように言います。平たく言えば作りたてを飲めるビアパブという事ですね。
クラフトビールが世界で一番盛んと言える北米では、州ごとどころか地域ごとにブリュワリーがあり、その場で作ってその場で飲める「ビアパブ」こそが、ビールの醍醐味と言えるとか。
実際に自分がシアトルに行った時にも、地元のビールのあまりの多さに驚きました。
実はこのシンガポールにも20年以上も前、1990年代後半からそのようなブリューパブが現れ、日本とほぼ変わらない年代からクラフトビールの歴史を作ってきました。
現在は更にブリューパブの数は増え続け、今まさにピークを迎えていると言っていいでしょう。
今回はそんな、作りたて一番!のフレッシュで美味しいローカルビールを紹介していこうと思います!
<広瀬礼仁>
シンガポールのクラフトビール専門店「SG TAPS」店長兼ウエイター。
当地シンガポールにて、クラフトビール業界に5年程関わったのち、2018年4月に独立。ビールを始め、日本酒、ワイン、ウイスキーなど、アルコール文化に対する愛は誰よりも広く深いと自負している。
[Tiger Tavern]【閉店】
459 Jln Ahmad Ibrahim, Singapore 639934
こちらは何かといいますと、タイガービール工場見学に行った際に最後に立ち寄ってビールを試飲させてもらえる、あのバーです。
通常は$18ドルでタイガービール工場見学を申し込み、45分間の工場見学の後に、この「タイガー・タバーン」と呼ばれるバーで、5杯試飲ができるのですが、実はこのタイガー・タバーンは、工場見学をしなくてもこのお店だけ訪ねることもできます。
なぜここをまず紹介したかというと、ここはタイガービールのポテンシャルを最大限に味わうことができるバーだからです。
こちらの工場見学に行かれた方は多いかと思いますが、その際にこちらのバーで飲むタイガービールの美味しさに驚かれたのではないでしょうか?
新鮮さもさることながら、温度管理もきちんとしていて、いつでもどこでも売っているタイガービールは、実はこんなに美味しいビールだったんだと改めて感じさせられます。
ですので、クラフトビールではありませんが、やはりシンガポールのビールを語る上では外せないとの思いがあり、最初に掲載させていただきました。
タイガー以外にも、ギネスやハイネケン、アーキペラーゴなども同じく最高のクオリティーで飲める上、革張りの重厚なソファーをしつらえた室内は、とても高級感があり落ち着きます。
何度か工場見学に行った方で、こう思う方は多いはずです。
「ぶっちゃけ見学はもうすっ飛ばしていきなりここで飲みたい」と。
実はそれは可能なんです。入場料$11を支払えば、このタバーンに直接入ることができます。
入場料を払ったとしても、ビールは全て4~5ドルですので格安です。しかも完璧に管理された最高のタイガービールや他の数種のドラフトが飲め、英国の高級パブの雰囲気を味わえる。
時間に余裕があるときや都会の喧騒から離れたい時など、わざわざ足を運ぶ価値は十分にあります。なんせこのような店が都心部にないのですから。
なぜこの直営店をシティーエリアに出してくれないのでしょうか?観光客にも大いに需要があると思うのですが。
場所が不便で、閉店も17時と早いですが、最近は日曜日も開けるようになったらしいですので、時間があいた週末のお昼飲みなどで行ってみてはいかがでしょうか?
- 価格:安い
- クオリティー:最高
- 雰囲気:ハイエンド
- トイレ:とてもきれい
- アクセス:シンガポールの端の方
- 一口ポイント:タイガービールに対する価値観が変わる
[Live At The Crossroads]
【2021年5月時点アップデート】閉店
Block B #01-09/10, Clarke Quay, 3 River Valley Rd Singapore179021
クラークキーエリアの噴水広場の真向かい。以前「Pump Room」という別のローカルクラフトビアバーがあったところに、同じくシンガポールのクラフトビールである「クロスロード」のブリューパブが、数か月前にオープンしました。
かなり広めの店内には大きなステージがあり、その店名の通り毎日ライブが演奏されています。
以前の「Pump Room」でもやはり派手にライブをやっていましたので、そこは踏襲されているようです。シンガポール人も欧米人もバーと言えばライブ!という方が多いようで、金曜日ともなれば客席も盛り上がり、バンドもノリノリで演奏しています。
ブリューパブと言ってもビールを醸造する設備は奥に隠れて見えませんので、お店を見ただけではここでビールを作っているとはわかりませんが、壁の裏にかなり大きなタンクがいくつも並び、常に数種類のビールを醸造しています。
ラガー、IPA、サマーエールなど、近頃のひねりまくったクラフトビールとは一線を画すスタンダードな品ぞろえですが、スチームエールという古いスタイルのものも作っています。
シンガポールのクラフトビールとしては比較的長く経営しており、ボトルでも様々なパブに出荷されていますので、味はとても安定しており、飲み飽きないビールになっています。
ブランド名「クロスロード」は、職人的な奥の深いビールと大衆的な飲みやすいビールが交差する地点、という意味合いだそうですので、コンセプトの通りのビールをぶれずに作り続けているのですね。
また本格的なバー設備もあるので、ビールだけではなくワインやカクテルも揃えています。
1パイント16~17ドル程度で、夜中3時まで開いていますので、遅くから飲める場所としても重宝します。クラフトビールを提供するお店としては閉店時間は一番遅いと思います。
2次会、3次会でもぜひ利用したいものです。
- 価格:やや高い
- クオリティー:良い
- 雰囲気:ライブハウス風
- トイレ:きれい
- アクセス:フォートカニング駅近く
- 一口ポイント:クラークキー中心部の派手な店
[Prague Microbrewery & Restaurant]【閉店】
331 New Bridge Rd Singapore 088765
アウトラムパーク駅のすぐ上のホテル「ドーセット」の向かいにあり、窓から大きな貯蔵タンクが3本並んでいるのが見えるので、ここでビールを作っていることを知っている方も多いかも知れません。
しかし意外にもそれが本格チェコビールだという事には気づかないのではないでしょうか?
「プラハ」というブリュワリー名を見ればわかるかも知れませんが、正統チェコスタイルのビールを作っています。シンガポール人オーナーのブリュワリーではありますが、チェコ人を招聘し醸造しているので、チェコビールの味をきちんと再現しています。
ビールの種類はいたってシンプル。チェコピルスナーかダークピルスナー(黒)そしてその二つのハーフアンドハーフ、全部で3種類です。
シンプルだからと言って単純な味というわけではありません。私たちが一般的に飲んでいる「ピルスナー」スタイルはチェコが起こしたビール革命によって世界に広まったものであり、もちろんチェコがその源流となっています。
ピルスナーの本場チェコではそのオリジナルのテイストを今でも色濃く残していますが、その大きな特徴は、チェコ産の高級ホップを大量に使用することによって生まれる独特の苦みとハーブ香、そして泡もちです。
こちらの「Prague」でもそこはきちんと踏まえており、爽やかな飲み口ながらギュッと締まった後味を体験できます。
ビールは10~13ドルとお得なお値段。さらにハッピーアワーや飲み放題などのプロモも常時行っていますので、リーズナブルに飲めます。
料理にもチェコの雰囲気を加味しており、郷土料理とまではいきませんが欧州のパブ料理が味わえます。
また隣は系列店のペラナカン料理店となっており、こちらからシンガポールの伝統的な料理を注文することもできます。
チェコビールとペラナカン料理というのは案外面白いかも知れません。
- 価格:リーズナブル
- クオリティー:おいしいがやや安定性に欠ける
- 雰囲気:欧州を感じさせる
- トイレ:きれい
- アクセス:とても良い(アウトラムパークすぐ上)
- 一口ポイント:チェコ人が作るチェコビール
[Hospoda Microbrewery]
180 Albert St #01-19 Singapore 189971 Albert St Singapore 189971
こちらはシンガポールのブリューパブとしては結構歴史の長い、しかし本当に知る人だけが知る、隠れたブリューパブです。
ここもまたチェコビールです。この狭いシンガポールに島内産チェコスタイルビールが2つもあるなんて、面白いものですね。
この「ホスパーダ」は本当に小さいお店で、シンガポール最小のブリュワリーといって差し支えないでしょう。店内には醸造設備がギュッと詰まっており、あとはキャッシャーのみ。客席は全てテラス席になります。アルバートコートという、ホテルの前庭のようなバー・レストラン街の並びの一軒なので、お客さんは比較的欧米人が多いようです。
こちらも品揃えは、ピルスナー、ダークピルスナー、ハーフアンドハーフの3種類ですので、これがチェコのスタイルとしては一般的なのかもしれません。
先に紹介した「Prague」よりもマイルドな味で、どちらかと言えばさっぱりしています。外席で飲むのに適した味になっているのだと思います。
パイントで1杯15ドル程度ですが、ハッピーアワーもあり、陽が落ちる前が気持ちの良い場所ですので、早い時間にリーズナブルに飲むのがいいかも知れませんね。
おつまみはミートボールとソーセージのみで品切れの場合も多いので、食事は期待できません。もしあればどちらも美味しいのですが。。。ここは自家醸造ビールに特化したお店と考えていただければと思います。
リトルインディアのすぐ近くにあり、とても意外なロケーションのブリュワリーですので、他の人が知らないお店に行きたい方には特にお薦めです。
- 価格:まあまあ
- クオリティー:日による
- 雰囲気:気軽に一杯やれる感じ
- トイレ:ホテルのトイレなのでとてもきれい
- アクセス:まあまあ(リトルインディア駅近く)
- 一口ポイント:4畳半くらいのブリュワリー
[Tawandang Microbrewery]【閉店】
26 Dempsey Rd, #01-01 Singapore 249686
シンガポールに進出してきたバンコクのブリュワリーです。おしゃれなレストランが立ち並ぶ開放的なエリア、デンプシーヒルに大きなお店を構え、ビールもそこで醸造しています。
すでに10年選手に入るほど長く経営しており、入れ替わりの激しいデンプシーヒルで長く成功していることからも、その実力がうかがえます。
タイのブリュワリーですが意外なことにビールは正統派のドイツビール。ラガー、ヴァイツェン、デュンケルの3種類です。どれもさっぱりと飲みやすく、かつフルーティーで、タイ料理にもよく合います。パイント15ドル程ですが、ここはピッチャーなどの大きなサイズがありますので、何人かで行くときはシェアした方がリーズナブルです。
入り口を入ると、ビールを注ぐディスペンサーの後ろにどーんと大きなタンクが二本鎮座しており、いやがおうにもビール気分が高まります。
料理はやはりタイ料理を中心に、シーフードや洋風グリル、ご飯・麺物まで、これでもかというくらいの種類があります。タイ料理だけでもカレー・トムヤムクン・前菜類とかなりの種類があり、本格的な味なので、食事だけのお客さんも多く見られます。ただし一品の量が多いので、一人ではなくグループで行くことをお勧めします。
しかし何より、特筆すべきなのはこちらのライブ設備です。
ライブスペースというには大きすぎるステージ、天井に設置された派手な照明設備、大きな音響設備、カメラによる演出など、レストラン内とは思えない、ライブハウス顔負けの本格ステージとなっています。こちらで毎日ライブが行われているようです。ライブの様子は大きなスクリーンにも映し出され、店内のどの席からも楽しむことができます。
シンガポールの古い高級家屋を改装した立派な店舗にはおそらく200席以上のキャパシティーがあり、相当大きなパーティーでも対応できます。高い天井で室内も開放感があり、調度品や装飾にもタイの雰囲気が随所に見られ、ビールだけに留まらないエンターテインメントを提供してくれています。
- 価格:やや高い
- クオリティー:万人に受ける
- 雰囲気:派手
- トイレ:きれい
- アクセス:悪い
- 一口ポイント:ライブハウスなみのエンターテインメント
いかがでしたでしょうか?
その場で作られたビールをその場でダイレクトに飲めるブリューパブ。
新鮮さ・味もさることながら、やはりその肝はタンクから直送というライブ感だと思います。そのためか、お店もそれを伝えるためのアクティブな工夫をしている所が多いように感じます。
探してみるとシンガポールにも多くのブリューパブがあります。ですので今回は前編・後編に分けてみました。後編でも作りたてを美味しく飲めるお店をたくさん紹介いたします。
ちなみにこの前編・後編には、以前すでに紹介しているブリューパブは含まれておりません。
On Tap Craft Bistro、Red Dot、Poco Loco、Beerfest、Little Islandなど、すでに記事にしているブリューパブもあります。こちらもそれぞれ個性的で面白いパブですので、ぜひ過去ログもお読みいただけますと幸いです。
シンガポールのおすすめクラフトビール
過去のクラフトビールコラムはこちら⇩
https://byst.sg/category/blog/food-drink/craft-beer/
SG TAPS
島内唯一シンガポールのクラフトビールが14種類、生で飲めるシンガポールビール専門店。 ボトルビールでは更に、日本、香港、ベトナム、台湾、インドなどのクラフトビールを揃え、アジアのクラフトビール文化を底上げしていきたいと考えている。 ラクサピザ、奄美鶏飯風チキンライスなど、ローカル、和洋食を絶妙に組み合わせたユニークなフードも人気。
https://www.facebook.com/SGTAPS13/