【&Hによる暮らしのノート】ヘルパー/メイドのいるシンガポールライフ vol.8

■連載小説 -星と陽の間で- 第4話■

夫のシンガポール赴任に伴い来星することになった主人公・映子が、シンガポールと日本の価値観の間で揺れ動く。

そんな映子のこれから始まるシンガポール生活への不安や困惑、希望を描いたストーリー。

前回までのお話

映子のためにシンガポール出張の合間を縫って在星中の友人・美子と久々に再開した佳奈

シンガポールでのリアルなヘルパーとの生活を聞き、未知の世界が開かれていく

【第4話】

「せやけどやっぱり他人と生活するんやから、いろいろ問題はあるんやけどな」

「え、なに。なんかコワイんだけど」

「まあまあいろんな話聞くからさ。かわいいのやったら文房具盗られたとか、化粧水が地味に減ってるとか、子供のオヤツがコッソリ減ってるとか。

かわいくない、笑われへん話もいっぱいあるしな。

雇用主も人間やし、ヘルパーも人間やからある程度はしゃーないと思うねん。

ヘルパーとは育ってきた環境も生活基準もモラルも違うしな。

しかも他人、それも外国人と住むわけやから何にも問題ない方が珍しいんちゃうかな。

日本人は”他人と一緒に住む”っていう壁が大きいと思う。

シンガポールに帯同してきたオクサマたち、私がヘルパー雇ってるって言ったらまず間違いなく『ワタシ、他人と住むなんて無理…』って言わはるねん。

その割にはめっちゃヘルパーとの生活について聞いてくるんやけどな。

私も初めは『他人と住むなんて無理…』って思ってたけど、雇い始めたらなんでもっと早よ雇わんかったんやろ、って思うもんな。

実際雇ってみて”やっぱり他人と暮らすのは無理”っていう人もモチロンいてはるから、そこは個人差なんやとは思うけど、なんやろな、その『他人と住むなんて…』っていう言葉の裏に潜む『家事を外注するなんて』みたいなのをヒシヒシと感じる。

でもな、私は日本人はもっとヘルパー雇ってもいいと思うねん。

日本の女の人は頑張り過ぎやで。

もっとラクしたらええねん。ってかもっとラクするべきや、って。

お母さんやから自分の時間持ったらアカンとかいうアホみたいな思想に縛られんの辞めたらええねん。

みんな頑張ってるのに私だけラクするのは…とか、なんの我慢大会やねん。

でも、なんでか日本人と韓国人はそういう考え方の人多いように思うわ。

母として、妻として、嫁としてっていう立場に縛られてることが多い気がする。

私ら欧米人と話す機会も多いから、アジア人、特に日本人は時代に取り残されてる感はあるよね。

確かにそういう同調意識とか我慢が美徳とか日本人のええとこかもしれんけど、それとこれとはちゃうやろ。

母親が我慢してなんかええ事あるんやろか。

みんな早よ気ぃついたらええのに」

ワンオペで家事や育児を頑張っている妻やお母さんに、そんなに一人で頑張らなくてもいい方法があるんだよ、ということを伝えたい。

それで女性が一人でも幸せになるのなら。

その結果家庭が一つでも幸せになるのなら。

日本でのワンオペ育児と、シンガポールでヘルパーと協力しての家事育児。

両方を経験している美子は二つの視点から女性の幸せについて考えることが出来るのだろう。

だからこそ言えることがたくさんあるのだろう。

「さすが美子、相変わらず熱いね。日本人でヘルパー雇ってる人ってやっぱ少ないの?」

「小さい子がいるところは雇ってはったりするけど、子供が小学生ぐらいってなるとぐっと減るかな。子供が大きくても仕事してはるとこは雇ってたりするけど。

あとはさっき言うたみたいに変な我慢と英語の壁かな。

まずヘルパー紹介してくれるエージェンシーは英語しか通じひんところが多いしね。

ヘルパー関連の記事とか情報源がほとんど英語しかない、っていうのが雇わへん大きい要因やと思うんやけどな」

「どうしたの?美子、ヘルパー関連の仕事でも始めるの?」

「…え?

 佳奈、今なんて言うた?」

「あまりにも美子の思いが熱いからさ。ヘルパー関連の会社でも立ち上げるつもりなのかと思って」

「…その発想はなかったな。

そっか。”日本人雇用主増えたらいいな”とか、〝何かできひんかな”とか、漠然とは思ってたけど…

なるほどね、私がハード面を整えてビジネスにすればいいんか。

ちょっとそれ面白いかもしれん。真剣に考えてみるわ」

「映子にもお手伝いさん勧めてあげてよ。

こっちに来たらお母さんもいないしご主人は出張多いし、どうやって子供を育てよう、ってすっごい不安がってたから」

「そういう人こそヘルパー雇わなアカンねん!

まかしといて。日本に帰りたくない、って言わせたる!」

「美子がいるから安心だわ。近々家探しに一度来るって言ってたからその時でもいいし、こっちに引っ越してきてからでもいいし、また会ってあげて」

「私はいつでもOKやから、って伝えといて。会えるの楽しみにしてるよー、って」

「ありがとね。よろしくお願いします」

「佳奈、保護者やな」

「ある意味そうかもね。なんかほっとけなくて」

私を〝保護者のようだ″と言った美子だが、私からしてみれば久々にあった美子の方がよほど頼もしく見えた。

聞きなれない関西弁のせいなのだろうか。

子供を産んでから10kg近く太ったと言っていたから、それもあの貫禄の構成要因なのかもしれない。

でも大学の頃とは別人のような美子は、大学の時とは全く違った自信と魅力に満ち溢れていた。

人はシンガポールに来ると何かが変わるのかもしれない。

この気温のせいなのか、いろんな人種の人たちと生活するせいなのか。

いずれにせよ、日本を出ることでコミュニティの結束力が強まるのは確かなようだ。

-映子はどんな女性になって帰ってくるんだろう-

佳奈は楽しみなような、羨ましいような、何とも言えない気持ちとブンガワンソロのパイナップルタルトを日本に持ち帰った。

<第5話に続く・・・>

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